第五章 未知への挑戦

その出来事をきっかけに、私は石鹸の研究を始めた。

先ずは、石油系界面活性剤などの石油系化学薬剤を使用しない生分解性に優れた天然由来の無添加石鹸を製造する大手石鹸製造会社へ足を運び、いろいろ尋ねた。そして進められた主力石鹸製品を購入し、私の自社工場で試験洗いを行った。しかし、匂いや処理水プールにたまっていく泡の多さが気になって、その石鹸を使っていく事は断念した。しかし、そうした石鹸を使った試験を通じて石鹸の可能性を実感できた私は、ウガンダシアバター石鹸を使ってのタオル製造を何とか実現したいという気持ちが高くなり、その可能性を求め調べを進めた。

ウガンダへの行き来と、石鹸屋への訪問などを繰り返していた頃、JETRO(日本貿易振興機構)と巡り合い、ウガンダの現地工場で作ったウガンダシアバター石鹸を日本へ輸入することを目指すプロジェクト(輸入開発実証案件)が始まった。案件の調査のためウガンダへ3度訪れ、ウガンダシアバター石鹸を作っていこうとする現地工場から石鹸を購入し調査したが、オイルの割合が高いなどの製品品質の悪さが明るみに出たことで、現地で製造された石鹸を輸入していくことは断念せざるを得なかったが、シアバターオイルは初めに柏田氏から紹介を受けたシアバター精製工場から仕入れられるようになり、この事業の成果としてウガンダシアバターオイルの輸入を完了させた。

大量に輸入したウガンダシアバターオイルを、100%使って石鹸を作ってくれそうな日本国内の石鹸製造メーカーを探し、歩き回ったが打診した3社には、ことごとく断られてしまった。理由としては、「泡立ちが悪い石鹸は作れない。」という一点張りの答えだった。石鹸メーカーにもプライドがあり、「今の市場ニーズである泡立ちが良い石鹸を作ろうとする石鹸メーカーにとっては、泡立ちの悪い石鹸など邪道だ」という事だったと今では理解している。

そんな事も経験してきた中でたどり着いたことは、「石鹸も自分で作らないといけない。」という答えだった。

ウガンダシアバターを100%使用して作る石鹸の実現は、なるようにして自らが生み出さなければならないという決意の基で、時間をかけて黄金比の割合の発見に繋がっていった。

石鹸の歴史は古く、昔あるところで牛を焼いていた人間が、雨が降った次の晴れた日に、牛の油が落ちた灰が泡立っていることに気付き、その灰を川での洗濯に使用したところ汚れが落ちたことから始まる。

要は、牛の油が灰のアルカリに反応し、鹸化という化学反応が起きたことで石鹸ができたという事を物語っている話だ。

現在は、アルカリ剤として水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを使い、天然油と鹸化させて作る方法が無添加せっけんを作る方法として大きく上げられる一つであるが、天然油の種類によって黄金比は異なる。私は、ウガンダシアバターオイルに適した黄金比にたどり着くまで、いろいろ試行錯誤し、研究に励んだ。そして、ようやく自力で作り上げたウガンダシアバター100%石鹸を使って、タオルを処理加工していく独自の精錬加工「自然低温シアバター精練法」の技術開発にこぎ着けた。

開発者そして開拓者として歩みを始めた私の、人生初の特許申請を果たせた瞬間だった。



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