【タオル製造の歴史を変える挑戦】

~ 父と子で繋ぐタオル製造の未来「持続可能なタオル製造技術の開発」~

私が大学を卒業し家に帰ってきた時、父はウガンダのシアバターで作った石鹸を使ってタオルを精練洗いする加工技術を開発し、特許申請を行っていました。
父は、私が走りっぱなしだった学生時代に度々私の練習環境を見に来ていました。東京の國學院大学へ入学してからも、たまに東京出張を入れ私に逢いに来てくれていました。その際、私は父が取り組んでいるタオル作りの挑戦について、父から多少の話は聞かされていました。私が4年時に箱根駅伝出場を果たした際に、「スマイリーアースを継がないか」と話した時も、父は自身のタオル作りに「誇り」というものを持っていることが理解できました。
私は、そんな父の「誇れるタオル作り」に「憧れ」を抱き、内定していた実業団への道を断ち、家業継承を決意し故郷へ戻ったことを覚えています。

私は、故郷へ戻った時に父がタオル作りにおける「一つのたどり着いた場所」に達していることを理解し、父がウガンダオーガニックコットンとウガンダシアバター石鹸のベストマッチに気付き、その謎を解き明かしていったのかを父から学びました。
そして、故郷に帰ってから通い始めた紡績会社で得る知識と経験を持ち帰り、父と共に私達のタオル作りのアップデートを行う事を繰り返しました。紡績や綿花についての知識を持っていなかった父は、私が紡績工場で得てくる経験や知識を新鮮に受け入れ、私もそんな父とのやり取りに、自然と引き込まれていきました。

勉強をさせてもらっていた紡績会社では、私は紡績歴60年という大ベテラン職人 本間さんの付き人として紡績の神髄を学ばせて頂いていたので、紡機の保全や解体などの経験に加え、綿という素材を見る技術も本間さんから直々に教わることができました。そんな本間さんが、度々口にする綿を表現する言葉や考え方は、私にとって大学時代に「走る事」を通して感じ取っていた体の感覚や、体との会話で感じる部分に近いモノであったため、私は走る感覚で本間さんの言う事を、自分なりに解釈し、父とのタオル作りに反映させてきました。そんな経験を重ねている内に、私はウガンダオーガニックコットンの買い付けも行うようになり年に3回から多い時には5回ほど、ウガンダへ通うようになっていました。
私はウガンダへ通う中で、農家さん達が家畜や身の回りの資源を上手く生かし、価値を生み出していることに気付き、現地農家さんたちの何気ない日常の作業に大きな感銘を受けました。そんなウガンダで得たヒントも、家に持ち帰り私と父はタオル作りに反映し、ウガンダで見た資源循環の思想をモデルに、タオル製造にその思想を取り入れました。

山という財産の継承も行って来ていた私達の家系は、大阪と和歌山の県境に位置する上之郷という村で何代も子孫を継承し、遡れる系譜で数えると私で9代目となることが分かっています。そんな私の家系で継承してきていた山を、私と父のタオル作りの資源として生かしていく取り組みを2015年から始めました。
父が2011年に開発していた「低温シアバター石鹸精練法」にアップデートを重ね、私と父はその年に自分たちのタオル製造工程から化石エネルギーを利用するボイラーの使用を辞め、自分たちの山から調達するバイオマスエネルギーでタオルを製造する技術を開発すると共に、バイオマス化への研究の中で発見した「綿の自浄作用」を技術化した「自浄清綿法」を開発し2度目の特許申請を果たしました。その技術は2018年に特許を取得することができました。

自浄清綿法の開発は、それまで課題となっていた私達のタオル製造から生み出される処理水の水質を完全無害化させ、処理水プールでメダカやヌマエビが自然繁殖するビオトープ環境を作り出し、汚染水として地域の自然環境を害してきたタオル製造工場から出る廃水を資源水へと価値転換することができました。そしてこの出来事は、これまで地域を害してきたタオル製造から地域を豊かにするタオル製造へと歴史が変わった瞬間となり、まさに新たなタオル製造の歴史が刻み始められた瞬間となりました。この一連の取り組みは2017年に開催された第19回日本水大賞で経済産業大臣賞に選定され、私と父は秋篠宮悠仁親王殿下の御前で表彰状を受け取りました。この経験は私達が今後築いていく「新たなタオル製造の歴史」を、積み重ねていく大きな大きな「第一歩」となりました。

「タオル製造の歴史を変える挑戦」
私と父は、「日本タオル製造発祥の地」である泉佐野に生まれ、またその地域の伝統的な「町のシンボル」であるタオル製造を、持続可能なタオル製造技術の開発の実現によって、自然豊かで人と自然が共生し分かち合う「タオル製造の町の未来」を築くための礎を、築いてくることができてきたと考えております。

私と父、即ちスマイリーアースの挑戦はまだまだ始まったばかりであり、これからこの自分たちで確立してきたタオル製造技術を駆使して生み出していく「生命を、そして地球を生かすタオル」を社会へ解き放ち、1枚のタオルが社会の考え方を変えていくことを信じ、その信念を掲げながらに自らが始めた「たおる革命」の達成を生涯の目標とし、世代を超えて「誠の真成るタオル作り」を未来へと繋いでいきたいと考えています。