水資源好循環化チャレンジ

かつては「和泉の国」と名付けられた泉佐野市。この地域は、豊富な水資源があったおかげでタオルの一大産地へと成長を遂げてきました。しかし、そんな地域の豊富な水資源を利用し、生み出してきた名産品のタオルを作る工程で産出されてしまう工場廃水は、地域の河川を汚染し、地域の生態系を壊してきてしまいました。ウナギやドジョウ、そしてメダカが見れた川は、いつしか無くなり、今では誰も近寄らない川になってしまっています。私達は、地域の財産でもある水資源を利用し、地域の名産品を製造するタオル製造会社として、地域の自然環境や生態系を汚さずに、タオルを世の中へ届ける決意を固めた2008年から、水資源利用の健全化を図るタオル製造技術の技術革新を独自で進めてきました。

ウガンダのオーガニックコットンという単独の綿に寄り添いながら生み出された独自のタオル製造法「自浄清綿法」(じじょうせいめんほう)は、水と綿のみで綿の油分や不純物を取り除く綿の処理方法で、私達が世界で初めて発見した「綿の自浄作用」を技術化した技術です。この技術は、2017年に第19回日本水大賞で経済産業大臣賞を受賞し、2018年に特許を取得しました。私達はこの技術を開発できたことで、工場廃水を無害化することを実現できました。

そんな無害化できた工場廃水を、私達は資源水として溜め置くプールを工場脇に作っています。そのプールの中では、メダカやヌマエビが繁殖し、地域に生息する昆虫が産卵し、鳥が水を飲みに来る生命の憩いの場となっています。まさにタオル工場にできたビオトープとなっているのです。私達が10年かけて生み出したタオル製造の歴史を変えた技術「自浄清綿法」の開発は、かつては生命を脅かしていたタオル製造が、生命を育むタオル製造へと変化し、タオル製造の町の未来を変えていく可能性を生み出しました。

生命を育むタオル製造に一歩足を踏み入れた私達は、プールに溜め置く水資源を農業にも生かしていく取り組みに挑戦し始めています。まずは、「綿」という素材に着目し、その綿に寄り添うタオル製造の研究を進めることができたおかげで、このような挑戦に取り組めるようになれたという感謝の意を「綿」に込めて、そしてタオル職人として綿という植物を更に深く深く知っていきたいという思いから、タオル製造からできる資源水を使って綿の栽培研究を始めています。
私達は、この綿の栽培研究を通じて地域の水資源を、タオル製造を鍵として農業や養殖分野への資源循環利用を図り、地域の水資源好循環化をタオル製造を通じてチャレンジしていっています。

「綿 wata」の可能性に魅了されたタオル職人が目指した理想。それは、綿との向き合いがもたらす生命(いのち)の循環する世界。
私たちは、タオル工場の排水を貯水するプール「タオル池」の中で起こる生態系循環を目の当たりにし、微生物やプランクトン、メダカやヌマエビ、ヤゴなどタオル池に住み着いた生命が有機物を循環し命を繋いでいることに気付きました。生命の循環には、資源の循環が起こっている。その循環の世界を更に広げ、理想のタオルがもたらす新たな可能性の創造に努めました。コロナ禍の時間を生かし、私たちはタオルの工場排水でウナギを自然に近い環境で天然養殖し、タオルの工場排水に含まれる有機物資源の生態系循環を利用したタオル製造と天然養殖を同時に行うエコシステム環境を構築しました。

更に、タオルの工場排水の利用価値を高めるため、綿栽培で培った知恵を生かす取り組みとして、タオル工場横に温室ハウスを作り、その中で肥料が多く必要と言われるバナナ(グロスミチェル種)栽培の研究にも取り組んでいます。タオル製造の常識を180度転換し、全く新しい視点でタオルを生み出す挑戦を継続してきたことで、スマイリーアースは安心で安全であることが当たり前のタオル工場を実現し、そのタオル工場を中心とした生態系を構築しました。

まさに、タオル製造の営みにより生命が育み、そして生命が循環し、生命が繋がれていく。タオル工場の中における水資源の健全化と正しい循環利用により、自然と共生する資源の好循環化が大きく前進しています。

2023年に初めて開花したタオルバナナの花