ゼロから綿を見直す研究を進めた中で、私たちは綿が持つ「一つの特殊能力」を発見することができました。それは、ある条件下で綿が自浄作用を発揮し、自らの油分を自ら落とすという現象で、まさに目から鱗のよな世紀の大発見が、私たちの前人未踏の挑戦に大きな可能性を与えてくれました。綿の自浄作用の発見を通じて、私たちは「自浄清綿法」を完成させ特許を取得しました。また染色を行わず綿の自然の色味という「綿の個性を尊重する」という考え方と共に、「オーガニックコットンが背負う役割」を届けていく二つの重要な方針を固めることができたことで、合成界面活性剤の断捨離を推し進め、最後の難関ポイントへ、たどり着きました。最後の難関ポイントは、タオルの吸水力の保持というタオル屋さんにとっては一番妥協したくない難関ポイントです。合成界面活性剤の強力な界面活性効果は、容易に綿繊維へ吸水力を保持させることができる魔法の薬で、その魔法の薬によって、綿繊維は抜群の吸水性を発揮し、長らく消費者であるユーザー様たちを喜ばせてきました。タオルとタオルユーザーによって築き上げられた「吸水性に価値を置いたタオルの品質基準」というタオルの深い歴史に、私たちは本当に悩まされました。しかし、高い吸水力を綿繊維へ保持させるために同じやり方をしてしまえば、オーガニックコットンが背負う役割が道半ばで途絶えてしまう。また、下水がないここ上之郷では、生態系の汚染は免れない。私たちのタオル工場の周りから生き物が消えてしまう。そんな最悪の光景が脳裏に浮かびあがってきた時に、両方の課題を解決できる大きな選択肢を与えてくれたのが坂下栄先生でした。坂下先生は、合成界面活性剤によって生み出される合成洗剤や歯磨き粉などに人体汚染リスクがあると注意喚起を促す発信を行うと同時に、「石けん」という石油由来ではない天然の界面活性剤への置き換えを提唱されていました。坂下先生が、「石けん」への置き換えを熱心に訴えていた理由は、自然界での分解の早さと、生態系や人体への汚染リスクが限りなく低いという安全性を最大の理由として声をあげていらっしゃいました。また、それらについて科学者として様々な生体実験や環境調査を行い、その実験結果や調査結果を、執筆された本や論文で分かりやすく発表されています。私たちは、そうした坂下先生からのメッセージを、本を通じて受け取り「石けん」の可能性に賭けて、完全なる脱合成界面活性剤への理想の実現に向け、更なる夢を追いかけ始めました。そうした想いが、私たちが向き合ってきたオーガニックコットンの栽培地ウガンダ共和国の北部に自生するシアの木の種から採取されシアバター(植物性天然油)との出会いを生み、また、そのシアバターを原料とした無添加の「石けん」の開発によって、完全自家製の「いらないもの(添加剤など)はいれない」石鹸を完成させました。そのシアバター石鹼の界面活性効果を有効利用し、綿繊維に吸水効果を与える研究を長年重ねたことによって、私たちは上之郷の生態系との共生を大原則としたタオルの生産プロセスを自社工場の中に構築し、またオーガニックコットンが背負う役割に誤魔化しなく、真面目に寄り添ったタオル生産プロセスを2018年に実現することができました。
坂下先生の本では、石油系の助剤や添加剤が含まれていない単なる「石けん」は、自然界に生きる微生物たちの働きによって約1日(24時間)で、最終的に炭酸ガスと水(H2O)に分解されると紹介されています。まさに、坂下先生のような科学者によって解明し発信された「警告(人類の未来と共にある地球の未来にとって、とても重要な研究結果)」を、我々のようなモノを生み出す「ものづくり」の現場に生きる者が理解を深め、その警告を受け止めた中で構築していく「新しい時代の価値観」に基づいた製品循環という仕組みを、社会へ供給していくことで創造される「より良い連鎖環境」によって、地球は笑顔を取り戻していってくれるのではないかと私たちは考えています。「オーガニックコットンが背負う役割」、それは「ただ、かっこいいという薄っぺらいものでは無く。」「地球の未来を変える大きな役割」。言わば私達人類に課せられた「我々の未来を左右する選択肢」であると私たちは感じています。自然との共生を第一に考え、人と社会そして地球の健康な状態を保ち続けるための、未来に向けた行動「Earth Well Being」を共に考え、共創していく共感の輪を、私たちはNature Towel Factoryを通じて創り出していきたいと考えています。